シェフが考える丁寧な「ものづくり」
Mary Jane シェフ
林 修史

– 商品開発にあたり意識したこと、大切にしたことを教えてください。
僕の場合、まずは商品の見た目を重視しようと考えました。手に取っていただくために、視覚的にインパクトのあるものを作ろうということで瓶詰めにしたんです。野菜の色って本当に力があるんですよね。自然の色とは思えないぐらい鮮やかで、深みがあるというか。その魅力が伝わるような見せ方やパッケージにしたいと思い、クリエイティブチームとも相談しながら磨き上げていきました。
当然ながら、中身にもとことんこだわっています。これまでフランス料理を長くやってきたこともあり、家庭でも気軽に楽しんでいただけるような常備菜を作ってみたいという思いがありました。召し上がっていただいたあとに喜んでもらえるのが一番のモチベーションなので、皆さんに気に入っていただけたらとてもうれしいですね。
– 印象に残っているエピソードはありますか?
やはり、レストランとは違った「ものづくり」をしているというのはすごく新鮮でした。たくさんの方々と関わって意見交換をしながら進めていく過程で、一人ではできないことなんだなとあらためて感じた部分もあります。チームで取り組むという意味ではレストランも同じなんですけど、今までは目の前にいらっしゃるお客様に向けて料理をご提供していたので。
もうひとつ、レストランの場合はお店の中で完結していたことが、商品をご購入いただいたところがある意味スタートになるっていうのは、ひじょうに面白いと思いました。そこからお客様のご自宅だったり、あるいはギフトとして誰かに贈っていただいたりしながら、皆さんの生活空間の中で楽しんでいただくという。シェフである自分にとって、貴重な経験をさせてもらっているなと感じます。
– 商品を考えるうえでこだわったところ、林さんならではの「テイスト」は?
「塩麹とヘーゼルナッツのキャロットラペ」は、瓶を棚に置いたときの見た目も楽しくなるよう、2種類の人参を使って配色にするアイデアが頭に浮かびました。効率重視だけではない、こだわりのひと手間です(笑)。ナッツでいうと僕はヘーゼルナッツが好きなのですが、割とコストがかかるので普通はあまり取り入れないんですよね。なのでそこもこだわりです。それから徳島の「濱醤油醸造場」の塩麹。塩味はほぼこれで決めているので、角がとれてまろやかに。うまみやコクも担ってくれるんです。発酵の力も加わって一段とおいしくなっています。
ラペはサンドイッチに挟んだり(クリームチーズとの相性も抜群です)、カレーに添えたりといったように、自由にアレンジしてみてください。「赤キャベツとみかんのマリネ ジュニパーベリー風味」は魚介とぴったりです。カルパッチョと合わせるのもおすすめですし、焼いた鯵や鰯もいいですよ。
「カラフルパプリカとオリーブのザアタルマリネ」は、ザアタルという中東のハーブミックスを使っています。パプリカは丁寧にローストして皮も全て綺麗に取っているので、わざわざ作るのはちょっとハードルが高いというときでも手軽に楽しんでいただけるかなと思っています。
– 今後新たに考えている商品やチャレンジしたいことはありますか。
常備菜のシリーズを充実させていきたいですね。野菜のビジュアルを生かしたカラフルなラインアップで展開できたらいいなと思っています。人参、キャベツ、パプリカときて、次に気になっている野菜はナスです。僕が所属している「MaryJane」は中東料理がベースなんですけど、この地域ってナスをたくさん使うんですよ。ナス料理って実はいろいろあって、スパイスともよく合うし、ピクルスも作れるんです。だから次はナスで何か作ってみたいと考えているところです。
– 最後にメッセージをお願いします。
難しいことや課題はたくさんありますが、わりと自由にいろんなことに楽しみながら取り組める環境がありがたいなと常に感じています。それぞれの商品の精度をしっかり高めつつ深堀りしていきながら、一つひとつ丁寧に大事に自分の仕事をしていきたいです。
Product
Essentials:林 修史(Mary Jane)がつくる「彩野菜のラペ」塩麹とヘーゼルナッツのキャロットラペ
カラフルパプリカとオリーブのザアタルマリネ
赤キャベツとみかんのマリネ ジュニパーベリー風味
Profile
林 修史 Shuji Hayashi
Mary Jane シェフ
1988年、北海道生まれ。「タテルヨシノ芝」で勤務したのち、2020年に日本橋「Mezzanine」のシェフに就任。現在は、2023年10月にオープンした「Mary Jane」のシェフとして腕を振るう傍ら、ケータリングやイベント出展、VIPへの会食対応など、クライアントのリクエストに応えたメニュー開発を多数手掛けている。